負け

午後になってむくむく起きだし、コーヒーを淹れようと湯を沸かすも、ヤカンがピーピー鳴る頃合いに豆が切れていることを思い出す。僅かな望みを託して、いつも買い置きを保存している冷凍庫を探ってみるも、ラップに包まれた随分昔に貰った鯖の糠漬けの凍るに委せる姿を発見したのみで徒労に終わる。世の中そんなに巧くできているものではない。
我が家には生憎お使いに行ってくれる女中も小僧もいないので、面倒臭いが目覚めきっていない体でコーヒー豆を買いに出かける。自転車を漕いでいるうちに豆買って家に帰ってお湯沸かして、という手続きが面倒になり天王寺HOOPにスターバックスが入ってるな、そこへ行こう、と、行ってみたのだけど、なんだもう人いっぱいで並んでるじゃないか。そりゃ土曜日の昼下がりだ、混むだろうて、だがしかし、天王寺ってアポロで映画見るか居酒屋で飲むかリッチドール以外に休日に人がわざわざ群がるような何か楽しいものってあったか? あるんだろうな、なにか。
床に転がってた"HAWAII"なんてでっかく書いてある土産物のTシャツを適当に来てビーサン突っかけて無精ヒゲ生やらかしたままノコノコ穴蔵から出てきた俺にはどうせ分かるまいて、と意味もなく卑屈になり、負け犬臭を出しながらスターバックスを避け近鉄地下のコーヒーショップへ。

コーヒー飲んで煙草をブカブカ吹かし鬼平を読んでしばしちんたら過ごしてからCD屋に。ポスターを見て「ん?美勇士?」と思うも美勇伝だった。石川梨華の新ユニットなのね。
それから本屋へ。スウィングガールズ絵コンテ集を見つけて読み耽ってしまう。我に返ったころには二時間近く経っていた。なんだか堪らなくなってスウィングガールズのノベライズを買ってしまう。相当スウィングガールズにやられているな。
映画にやられること自体は別に珍しいことではないが、ノベライズに手を出すのは初めてだ。喩えそれが監督自身の手になるものだとしても、ノベライズを買ってしまうのはなんだか負けた気がする。
原作小説を当たったりDVDやビデオを買うのはありなのだ。でもノベライズはどうもダメなような気がするのだ。マグカップとかスポーツタオルなんかの中途半端なオリジナルグッズも明らかにダメで負けの側だな。パンフはありだけど、公式ハンドブックはあっち側に片足突っ込んでる。Tシャツはデザイン次第で転ぶギリギリのライン。どういう線引きなのか自分でもよく分からないけれど、そんな気がする。
その後、成城石井でコーヒー豆を買って帰宅。
早速読んでみるに、ノベライズ、「台本を詳細に書いてみました」といった感じ。小説としては大して面白くはないのだが、まあそこはやられておかしくなっているので設定資料として楽しく読んでしまう。ああ、いいなあ気持ちいいなあ、こういうの。やっぱり俺、体質はヲタクだ。